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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)614号 判決

控訴人(原告) 全逓信労働組合

被控訴人(被告) 国

訴訟代理人 浜秀和 松岡敬八郎 外八名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し、金一〇〇万円及びこれに対する昭和四七年五月二四日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、次に補正するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決四枚目―記録四〇丁―裏一行目及び同三行目から四行目にかけての各「一〇〇万円」を「五〇万円」に改め、同五行目の「月二日(甲事件)又は同」及び「(乙事件)」を削る。

二  原判決五枚目―記録四一丁―表八行目及び同裏一行目の各「一〇〇万円」を「五〇万円」に改め、同二行目の「月二日(甲事件)又は同」及び「(乙事件)」を削る。

理由

当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、次に補正するほかは、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する(但し、原判決二五枚目―記録四一丁―表二行目の「規定」を「規程」と訂正する。)。

原判決二三枚目―記録五九丁―表二行目から七行目までを次のとおり改める。

「そして、後記のとおり、規程は、庁舎等におけるビラ、ポスター類の掲示は原則として許さず、例外的に許可されることがある旨定め(第六条)、運用通達においては、組合等恒例的にビラ、ポスター類を掲示しようとする者に対しては、掲示申出ごとの許可に代えて、掲示許可願によりあらかじめ一括的に許可してさしつかえない(第六条関係3)とされており、これらの定めと原審証人横尾修一の証言に照らすと、前記認定の掲示許可願とこれに対する掲示の一括的許可は、規程第六条及び運用通達第六条関係に基づくものであると解されるところ、原本の存在及びその成立に争いのない甲第一号証の四によれば、運用通達においては、規程第六条に定める許可は、国有財産法第一八条に定める使用許可ではなく、申出によつて庁舎管理者がその権限のわく内で事実上使用することを許可するものであつて、権利を設定する行為ではない(第四条関係1)とされていることが認められる。以上のとおり、行政財産の目的外使用は原則として禁止され、ただ例外的に許可されることがあるに過ぎないのであるから、行政財産の目的外使用につき私法上の権利を設定することはできないものであり、したがつて、行政財産の一部の使用である本件各掲示板における文書の掲示に対する一括的許可は、なんら私法上の権利を設定するものではなく、右許可による本件各掲示板使用の法律関係を控訴人主張のような契約関係とみることは、到底できないものといわなければならない。」

よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 田宮重男 中川幹郎 真栄田哲)

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